【洒落怖】危険な好奇心 – 2ch死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?
- 190 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/04/27(木) 22:54:20
- 『お待たせしましたー。』
バイトらしき女店員に声をかけられた。
俺と慎は待ってましたとばかりにレジに向かった。
女店員は少し不可解な顔をしながら
『現像出来ましたので中の確認をよろしくお願いします。』といいながら写真の入った封筒を差し出した。まぁ現像後の写真が犬の死骸や釘に刺された少女の写真のみだから、不可解な顔をするのも当然だが・・・
慎はその場で封筒から写真を取り出し、すべての写真を確認し、
『大丈夫です。ありがとうございました。』と言い、代金を支払った。
店を出て、すぐさま交番へ向かった。 これで全てが終わる 駅前の交番へ二人して飛び込んだ。 『ん?!どうしたの?』
中にいた若い警官が笑顔で俺達を迎えてくれた。
俺達はその警官の元に歩み寄り、
『助けてください!』
と言った。 俺と慎は『あの夜』の出来事を話した。裏付ける写真も一枚一枚見せながら話した。そして、今も『中年女』に狙われている事を。 一通り話し終わるとその警官は穏やかな表情で『お父さんやお母さんに言ったの?』
俺たちは親には伝えてないと言うと、
『ん~、んぢゃ家の電話番号教えてくれるかな?』と警官は言い出した。
- 286 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/04/30(日) 01:58:44
- 慎が『なんで親が関係あるの?狙われているのは俺達だよ?!』とキレ気味に言い放った。
ちなみに慎の両親は医者と看護婦。高校生の兄貴は某有名私立高校生。
俺達3人の中で一番裕福な家庭だが、一番厳しい家庭でもある。
『あの夜』親に嘘をついて秘密基地に行き、このような事に巻き込まれた、などバレれば、俺や淳もだが、慎が一番洒落にならないのである。
『助けてよ!警察官でしょ!!』と慎が詰め寄る。
警官は少し苦笑いして、『君達小学生だよね?やっぱり、こーゆー事はキチンと親に言わなきゃダメだよ。』
と、しばらくイタチゴッコが続いた。 あげくに警官は『じゃあ君達の担任の先生は何て名前?』
など、俺達にとっては《脅し》に取れる言葉を投げ掛けてきた。
まぁ、警官にとっては俺達の『保護者及び責任者』から話を聞かないと・・・って感じだったのだろうが、
俺達にとって、こういう時の『親・先生』は怒られる対象にしか考えられなかった。
そうこうしているうちに俺達の心の中に、目の前にいる 警官に対して《不信感》が芽生えてきた。
[このまま此処にいれば、無理矢理住所を言わされ、親にチクられる!]と。
- 290 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/04/30(日) 02:31:44
- (この警官は俺達の話を信じてくれてないのでは?)
と俺は思い始めた。
俺や慎が必死に助けを求めているのに、『親』『先生』ばかり言ってくる。
俺達は『中年女』の存在を裏付ける証拠写真まで持参しているのに。。
俺はもう一度警官に写真を見せつけ
『犬をこんな殺し方する奴なんだよ!』と言った。
すると、警官はしばらく黙り込み、写真を手に取り、意外な一言を言った。
『ん~。。これって犬?なの?』 『は?』と俺と慎は驚いた。この人は何を言っているんだろう!と。
続けて警官は
『いや、君達を信じていない訳じゃないよ。じゃあもう少し詳しく教えて。ここが頭?』 警官は冗談を言っている訳では無く、本当に解らないようだ。
俺はハッピーの写真を取上げ
『だから、、、』
と説明しかけて言葉が詰まった。
確かに、この写真を客観的に見ると犬の死骸には見えないかも・・。と思った。
薄茶色に変色した骨に所々わずかに残っている毛。。。
俺と慎はハッピーが死体になった翌日にも見ているので、腐食が進んでいても元の形(倒れていた角度、姿)を知っているが、
知らない奴が見るとただの汚れた石に汚い雑巾の様なものが絡んでいるようにしか見えないかも知れない。。
- 291 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/04/30(日) 02:56:37
- 俺は冷静に他の写真も見てみた。
板に刻まれた『淳呪殺』・少女の写真に無数の『釘』。。
たしかに『中年女』の存在に直接結び付けるのは難しいのか?
ひょっとして警官は『小学生の悪戯』と思っていて、先程から『親・担任』などと言っているのか?
俺はこのまま此処にいては危険だと感じ出した。
『絶対、親を呼び出すつもりだ!』
俺は慎に小さな声で耳打ちした。
慎は無言で頷き、アゴをクイッと動かし、『外に出る合図』を送ってきた。
すると次の瞬間には慎は勢いよく振り向き、走りだした。
俺もすぐさま後を追い、交番から抜け出した。
後ろから『おいっ!』と警官が呼び止める声がしたが、俺達は振り向かずに走り続けた。 警官が追い掛けてくる気配は無かった。警官はおそらく
『悪戯しにきた小学生が、嘘を見破られそうになり逃げ出した。』
とでも思っているのだろう。
俺と慎は警官が追って来ていないことを充分に確認し、道端に座り込み、緊急ミーティングを開催した。
- 352 ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M 2006/05/01(月) 09:22:18
- 『これからどーする?』
『どーしよ・・』
俺達は途方に暮れていた。最後の切り札の警察にも信じてもらえず、『中年女』から身を守る術を失った。
『これで全てが解決する』
と俺達は思い込んでいただけにショックはデカかった。
『このままだったら中年女に住所バレて・・・』
俺は恐かった。
すると慎が
『・・・しばらくあの女には出くわさないように注意して・・』
と言いかけたが
俺はすぐに『もう無理だよ!淳の学年とクラスがバレてる時点ですぐに俺らもバレるに決まってる!』と少し声を荒げた。
『でも、あの女、、、俺達に何かする気あるのかな?』
俺『?』
慎が言いだした。
『だってこの前俺ら学校帰りにあの女に出会ったじゃん。もし何かするつもりならあの時でも良かった訳じゃん。』
俺『・・・』
慎が続けて『それに山・・・もし俺らのことを許してないなら山に何らかの呪い彫りとかあってもいーはずじゃん。』 俺『・・・』 たしかに。山に行った時、確かに新しい『俺達に対する』呪い的な物は無かった。秘密基地は壊されていたが・・・
新しい『女の子の釘刺し写真』はあったが、俺達・・まして、フルネームが バレている淳の『呪い彫り』は無かった。
- 355 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/05/01(月) 09:38:55
- 俺は内心『そーなのかな?』と反論したかったが、しなかった。
それは、慎の言うとうり実は俺達が思っている程『中年女』は俺達の事を怨んでいない、忘れかけている。と思いたかった。
慎はもう一度『俺らを本気で怨んでいるなら何らかの《アクション》を起こすはずだろ?』
と、まるで俺を安心さすかのように言った。
そして『学校の近くをウロついてるのも、俺らを捜してるんぢゃなく《写真の女の子》を捜してる可能性もあるだろ?』
と言葉を続けた。
『そーか・・・』
俺はその慎の言葉を聞いて少し気持ちが楽になった感じがした。
と言うか慎の言った言葉を自分自身に言い聞かせ、自分自身を無理矢理納得させようとした。
それは【現実逃避】に近いかもしれない。
慎自身もそうだったのかも知れない。もう『中年女』から逃げる術が見つからず、言ったのかも知れない。
しかし俺は、、
俺達は、
『そーだよな!そのうち俺らのことなんて忘れよる!』
『もう忘れとるって!』
『なんだよチクショー!ビビって損した!』
『ほんま、あの女、泣かしたろか!』
とお互い強がって見せた。ある意味やけくそに近いかもしれない。
- 363 ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M 2006/05/01(月) 13:47:06
- しばらくその場で慎と『中年女』の悪口など、談笑していた。
辺りは薄暗くなり始め、俺達は帰宅することにした。
慎と別れる道に差し掛かって、『明日の帰り、淳の様子見に行こっか!』『おう!そやな!』
とお互い明るく振る舞って手を振り別れた。
俺の心は少し晴れやかになっていた。
『そーだよな・・慎の言う通り、中年女はもう俺達の事なんて忘れてるよな・・』
と。
まるで自己暗示のように繰り返し言い聞かせた。
足取りも軽く、石を蹴りながら家に向かった。
空を見上げると雲も無く、無数の星がキラキラ輝き、とても清々しい夜空だった。
今まで『中年女』の事でウジウジ悩んでいたのが馬鹿らしく思えた。
自宅に近づき、その日は見たいアニメがあるのに気付き、俺は小走りで家に向かった。
『タッタッタッタッ、、、』夜の町内に俺の足跡が響く。
『タッタッタッタ、、、』
静かな夜だった。
『タッタッタッタッ、、、』
ん?
『タッタッタッタ・・』
俺の足音以外に違う足音が聞こえる。
後ろを振り向いた。
暗くて見えないが誰もいない。気のせいか。。
ナンダカンダ言って俺は小心者だなと思いながら再び走った。
『タッタッタッタッ。。。』
『タッタッタッタ・・』
・・ん?誰かいる。
- 365 ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M 2006/05/01(月) 14:06:24
- 俺はもう一度立ち止まり、目を凝らして後ろを眺めた。
・・・やっぱり誰もいない・・
確かに俺の足音にマジって後ろから誰かが走ってくる足音が聞こえたのだが?!
俺も淳のように自分でも気付かないうちに精神的に『中年女』追い詰められているのか?ビビり過ぎているのか?
しばらく立ち止まり、ずーっと後ろを眺めた。 ドックンドックン鼓動を打っていた心臓が、一瞬止まりかけた。 15㍍程後方、民家の玄関先に停めてある原付きバイクの陰に誰かがしゃがんでいる。
いや、隠れている。
月明かりでハッキリ黙視できないが一つだけハッキリと見えたものがある。
『コートを着ている!』
しばらく俺は固まった。
隠れている奴は俺に見つかっていないと思っているようだが、シルエットがハッキリ見える!
俺は一瞬混乱した。
『中年女だ!中年女だ!中年女だ!中年女!中年女!』
腰が抜けそうになったが、本能だろうか、次の瞬間
『逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ逃げなきゃ!』
ともう一人の俺が、俺に命令する。
俺は思いッキリ走った!運動会の時より必死に走った。もう風を切る音以外聞こえない程、無呼吸で走った。
- 413 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 更新遅くてスイマセン 2006/05/02(火) 17:47:42
- 無我夢中で家に向かって走った。
家まであと10㍍。
よし!逃げ切れる! 『!』
一瞬、頭にあることがよぎった。
【このまま家に逃げ込めば間違いなく家がバレる!】
俺はとっさに自宅前を通過し、そのまま住宅街の細い路地を走り続けた。
当てもなく、ただ俺の後方を着いて来ているであろう『中年女』を巻く為に。。。
5分ほど、でたらめな道を走り続けた。
さすがに息がキレて来て歩きだし、後ろを振り向いた。 もう、『中年女』らしき人影も足音も聞こえて来ない。
俺は周囲を警戒しつつ、自宅方面へ歩き始めた。
再び自宅の10㍍程手前に差し掛かり、俺はもう一度周囲を警戒し、玄関にダッシュした。
両親が共働きで鍵っ子だった俺はすばやく玄関の鍵を開け、 中に入り、すばやく施錠した。
『。。。フぅー。。』
安堵感で自然とため息が出た。
とりあえず慎に報告しなければと思い、部屋に上がろうと靴を脱ごうとした時、玄関先で物音がした。
『!?』
俺は靴を脱ぐ体制のまま固まり、玄関扉を凝視した。
俺の家の玄関は曇りガラスにアルミ冊子がしてある引き戸タイプなのだが、曇りガラスの向こう側に。。。
玄関先に誰かが立っている影が映っていた。
- 451 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/05/03(水) 08:46:27
- 玄関扉を挟んで1㍍程の距離に『中年女』がいる!
俺は息を止め、動きを止め、気配を消した。
いや、
むしろ身動き出来なかった。まるで金縛り状態・・・『蛇に睨まれた蛙』とはこのような状態の事を言うのだろう。
曇り硝子越しに見える『中年女』の影をただ見つめるしか出来なかった。
しばらく『中年女』はじっと玄関越しに立っていた。微動すらせず。
ここに『俺』がいることがわかっているのだろうか?・・。
その時、硝子越しに『中年女』の左腕がゆっくりと動き出した。
そして、ゆっくりと扉の取手部分に伸びていき、『キシッ!』
と扉が軋んだ。
俺の鼓動は生まれて始めてといっていいほどスピードを上げた。
『中年女』は扉が施錠されている事を確認するとゆっくりと左腕を戻し、再びその場に留まっていた。
俺は依然、硬直状態。。
すると『中年女』は玄関扉に更に近づき、その場にしゃがみ込んだ。
そして硝子に左耳をピッタリと付けた。
室内の様子を伺っている!
鮮明に目の前の曇り硝子に『中年女』の耳が映った。
もう俺は緊張のあまり吐きそうだった。鼓動はピークに達し、心臓が破裂しそうになった。
『中年女』に鼓動音がバレる!と思う程だった。
- 457 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/05/03(水) 09:18:17
- 『中年女』は二、三分間、扉に耳を当てがうと再び立ち上がり、こちら側を向いたまま、ゆっくりと、一歩ずつ後ろにさがって行った。
少しづつ硝子に映る『中年女』の影が薄れ、やがて消えた。。
『行ったのか・・・?』
俺は全く安堵出来なかった。
何故なら、
『中年女』は去ったのか?
俺がここ(玄関)にいることを知っていたのか?
まだ家の周りをうろついているのか?
もし、『中年女』に俺がこの家に入る姿を見られていて、『俺の存在』を確信した上で、さっきの行動を取っていたのだとしたら、間違いなく『中年女』は家の周囲にいるだろう。。
俺はゆっくりと、細心の注意を払いながら靴を脱ぎ、居間に移動した。
一切、部屋の明かりは点けない。明かりを燈せば『俺の存在』を知らせることになりかねない。
俺は居間に入ると真っ直ぐに電話の受話器を持ち、手探りで暗記している慎の家に電話をかけた。
3コールで慎本人が出た。
『慎か?!やばい!来た!中年女が来た!バレた!バレたんだ!』
俺は小声で焦りながら慎に伝えた。
『え?どーした?何があった?』と慎。
『家に中年女が来た!早く何とかして!』俺は慎にすがった。
- 546 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/05/05(金) 05:04:28
- 慎『落ち着け!家に誰もいないのか?』
俺『いない!早く助けて』
慎『とりあえず、戸締まり確認しろ!中年女は今どこにいる?』
俺『わからない!でも家の前までさっきいたんだ!』
慎『パニクるな!とりあえず戸締まり確認だ!いいな!』
俺『わかった!戸締まり見てくるから早く来てくれ!』
俺は電話を切ると、戸締りを確認しにまずは便所に向かった。
もちろん家の電気は一切つけず、五感を研ぎ澄まし、暗い家内を壁づたいに便所に向かった。
まずは便所の窓をそっと音を立てず閉めた。
次は隣の風呂。
風呂の窓もゆっくり閉め、鍵をかけた。
そして風呂を出て縁側の窓を確認に向かった。
廊下を壁づたいに歩き縁側のある和室に入った。
縁側の窓を見て違和感を覚えた。
いや、いつもと変わらず窓は閉まってレースのカーテンをしてあるのだが、左端。。。
人影が映っている。。
誰かが窓の外から、
窓に顔を付け、双眼鏡を覗くように両手を目の周辺に付け、室内を覗いている。
家の中は電気をつけていない為、外の方が明るく、こちらからはその姿が丸見えだった。
窓に『中年女』がヤモリの如く張り付いている。
俺は腰が抜けそうになった。
- 548 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M 2006/05/05(金) 05:31:11
- これは
【動物の本能】
なのだろうか?
肉食獣を見つけた草食動物のように、俺はとっさにしゃがみ込んだ。
全身が無意識に震えていた。
『中年女』からこちらは見えているのか?
『中年女』はしばらく室内を覗き、そのままの体勢で、ゆっくりと窓の中心まで移動して来た。
そして『キュルキュルキュル』と嫌な音が窓からしてきた。
『中年女』の右手が窓を擦っている。左手は依然、目元にあり、室内を覗きながら。。。
『キュルキュルキュル』
嫌な音は続く、
俺の恐怖心はピークに達した。
何かわからないが、『中年女』の奇行に恐怖し、その恐怖のあまり、声を出す事すら出来なかった。
すると『中年女』はとったに後ろを振り返り、凄い勢いで走り去って行った。
俺は何が起きたかわからず、身動きも出来ずに、ただ窓を見ていた。
すると、窓の向こうの道路に赤い光がチカチカしているのが見えた。
「警察が来たんだ!」
俺は状況が飲み込めた。
偶然通りかかったパトカーに気付き、『中年女』は逃げて行ったんだと。 しばらく俺はしゃがみ込んだまま震えていた。
『プルルルルル!』
その時、電話が突然鳴った。もう心臓が止まりかけた。
ディスプレイを見ると慎の自宅からの電話だった。
ひとけのない山でゲリラキャンプは止めます